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そこからも大宮の独壇場で、彼のペースにのまれたままただひたすらに会話が進んでいった。
だがこれから始まる数々の伝説を見ていく限りでは、彼なりにこれでも初対面の相手に気を使っていたのだと思い知らされる。
昼休みも終盤に差し掛かった頃、地元の話に盛り上がっていた僕らに突然大宮が何かを思い付いたようににやついた。
「そういえばお前ら、彼女いんの?」
見るからにそう言う話が大好きそうだと思った。
一瞬だけ頭に過った紫陽花凛の姿を一生懸命に押し込めながら、
「残念ながら僕は……」
と、肩をすくめてそう言えば、大宮はやっぱりと言わんばかりに笑った。
その隣で赤城が昔を思い出すように小さく口元を緩ませる。
羽村が彼女と一緒にいる時に見せる表情によく似ていて、それだけでなんとなく察しはついた。
「つい最近まで付き合ってたんだけどね」
「別れたのか?」
「うん、彼女は東北の大学に行っちゃってさ。遠距離恋愛ができるほど俺達の関係は深いものじゃないってあっさりフラれちゃった」
赤城は寂しそうに眉を潜めて、ごまかすようにお茶に口をつける。
知り合ったばかりで聞いてはいけない内容だったかもしれない。
「だったら大学でいい女みっけられるといいな!」
ところがそんな僕の不安など大宮には届かない。
「そう祈るよ」
だけど赤城もそんな大宮に嫌な顔ひとつしないで、次に顔を上げたときにはもう笑顔が戻っていた。
それは謝るより、ずっと正しい対処法だった。
「そんなことより大宮はどうなんだ?」
そこで赤城が反撃の一手に出る。
「彼女なんかつくったら、複数の女の子と遊べねぇじゃん」
まるで当然、辞書にも載っているだろうと言いたげな自信に満ちた言葉だった。
さすがの赤城も愛想笑い。
「ま、この学科は意外と目ぼしい娘がいるからな、じっくりやっていくさ」
「俺がこれから付き合う娘とすでに寝ていたなんてことにならないようにしてくれよ」
赤城がそう言うと、大宮はまた声を上げて笑った。
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