プロローグ

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父は、タケルが高校一年生の秋にビルの最上階から飛び降りて自殺した。 酒に酔っての事故だろうと警察官は言っていたが、父はそこまでうまく酒に酔える質ではなかった。 妻と子を失い、思えばあの頃から彼も病んでいたのかもしれない。 妻の葬儀を終えたころから、仕事帰りに飲めない酒に手を出しては、1~2杯で眠っていた。 「ごめんなぁ、タケル。パパは何もわかってやれないんだ。お前達に何もしてやれない。それがくやしくってなぁ…ごめんなぁ…ごめんなぁ…」 何度も謝罪を繰り返してはマズイであろう酒をチビチビ飲んだ。 泣きながら、ほどなくして眠った。 タケルは父の亡き後、父方の祖母に引き取られた。 親戚中「呪われてる」と罵っては施設行きを望んでいたが、この祖母だけがタケルを暖かく迎えてくれた。 「タケルちゃん、辛かったねぇ」 しわくちゃの祖母の手が頭を撫でて、タケルはぐしゃりと表情を歪めた。 兄が、母が、父がいなくなり一人になってからは、ただ途方に暮れるばかりで泣き方を忘れたようだったが その時ばかりは優しい瞳に見つめられて、押し込めていた涙が全て流れ出たのだった。
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