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鳥は何度も森に降り、隠れながら飛びつづけた。
何かから逃げるような気配にタケルも質問を投げかける機会を見失っていた。
随分飛んだと思う。
夜になり、鳥は細い川の傍に降り立った。
「長居はできないが…休憩しよう、お前も喉が渇いただろう」
警戒するように空を見渡しながら、タケルに川の水を飲むように促す。
両手で掬ったそれは、冷たく喉を潤した。
「何から逃げてるの?」
川をつつくように、鳥も水を飲んだ。
それを眺めながら、タケルが思いきって聞いてみると、鳥はピクリと彼を見遣って、値踏みするように見つめた。
「……全てからだ」
「全て?」
「人間を見つければ周囲に危険を知らせるのは義務だ。怠れば俺でさえ危険視される。だから鳴いた」
ーピィィィィ!
あの甲高い鳴き声を思い出す。
警報のように響いたあれは、遠くまでその場所を正確に伝えるという。
「今俺達は、それに駆け付けるもの達から逃げている。」
「…?…君が…知らせたのに?」
「言っただろう、義務だ。周りにいた植物の一本一本すら、俺達を見ていた。知らせなければ、あの場から飛び立つ隙もなかったんだ」
そう言ってまた、伺うように空を見上げた。
「人間は…危険なの?」
どこか、予感のようなものはあった。
広がる自然、動物、空。
どこを見ても、寧ろ不自然なほど
人間の姿も文明のかけらさえなかった。
「人間は危険な古代種だ。見つければ殺すのが常識なんだ」
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