3人が本棚に入れています
本棚に追加
18年前、そこはごく一般的な一軒家が建てられたばかりだった。
誠実な夫と朗らかな妻の元に幸せが2倍になって舞い降りたのは、春の日差しにも慣れた頃。
念願の出産、双子の男の子が誕生したのだった。
彼らは『カンタ』と『タケル』と名付けられ、優しい両親の愛情を一身に受けて元気に育った。
しかしまだ1歳にも満たないころに、両親はこの双子に困惑の色を隠せなくなる。
「カンタ?」
母、ヨシノが目の前の光景に思わず双子の兄を呼んだ。
カンタは一度だけ振り返って、まだ発せない言葉の変わりのように弟へと視線を落とした。
無邪気に両手足を投げ出して、すやすやとタオルケットの下で眠っているタケル。
それをあやすようにポンポンと優しく撫でながら、カンタが膝の上に置いた絵本を読んでいた。
2卵生で顔付きこそ若干違うが、体格もそう変わらないわずか生まれて数ヶ月の双子に、明らかな相違が見え始めていた。
最初のコメントを投稿しよう!