プロローグ

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18年前、そこはごく一般的な一軒家が建てられたばかりだった。 誠実な夫と朗らかな妻の元に幸せが2倍になって舞い降りたのは、春の日差しにも慣れた頃。 念願の出産、双子の男の子が誕生したのだった。 彼らは『カンタ』と『タケル』と名付けられ、優しい両親の愛情を一身に受けて元気に育った。 しかしまだ1歳にも満たないころに、両親はこの双子に困惑の色を隠せなくなる。 「カンタ?」 母、ヨシノが目の前の光景に思わず双子の兄を呼んだ。 カンタは一度だけ振り返って、まだ発せない言葉の変わりのように弟へと視線を落とした。 無邪気に両手足を投げ出して、すやすやとタオルケットの下で眠っているタケル。 それをあやすようにポンポンと優しく撫でながら、カンタが膝の上に置いた絵本を読んでいた。 2卵生で顔付きこそ若干違うが、体格もそう変わらないわずか生まれて数ヶ月の双子に、明らかな相違が見え始めていた。
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