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双子の3歳の誕生日を祝って間もなく、その日は訪れた。
「いや!!」
「カンタ、どうしたの…お昼も食べなかったじゃない。お腹すいてるでしょ?」
家族揃った夕飯時、けれどカンタだけがテーブルに寄り付こうとはしなかった。
「食べないとダメだよ、おいで」
「いやー!!」
抱き上げようとするヤマトの腕を暴れて振り払う。
小さな手でカーペットに縋り付いて動こうとしない。
普段大人しい『良いお兄ちゃん』のカンタの駄々に両親は困り果て、椅子に大人しく収まっているタケルは泣きそうな顔で兄を見つめている。
「お昼、テレビで言ってた。ごはんは動物や植物を殺して作るって!」
「………殺してるだなんて…人間は命を借りて」
「違うよ!」
困ったような父の言葉を遮って、悲鳴に似た声が上がる。
次の瞬間、ヤマトは息を飲んだ。
目の前の、優しく賢い我が子が、今まで見せたことのない険しい形相でこちらを睨み上げているからだ。
その眼には、わずか3年の人生では到底経験できないはずの、恨みと悲しみ、深い絶望が伺えた。
「人間は命を分けてなんてない…奪ってばかりだ!何もわかってない、動物も植物も奪われてばかりだ!
奪う側だったなんて知りたくなかった!
ぼくはもう二度と食べたくない!!」
声が枯れるまで泣きわめき、タケルも同調するように泣いた。
そしてこれを最後にカンタは口を閉ざして、本当に食事を受け付けなくなった。
少量の水以外は口にせず、みるみる衰弱した彼を、両親は泣きながら入院させた。
太い針が四六時中小さな腕にささる姿は、親としてなんとも情けない気持ちにさせる。
何度も説得しつづけたけれど、カンタはその都度、タケルの頭を撫でることだけに終始した。
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