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そんな俺を他所に、神は話を続ける。
『神とは、実に不便な立場でな。自ら直接世界へ干渉する事は叶わない』
その言葉は、何処か独白染みていて。
妙な人間臭さを匂わせた。
『故に、転生者に力を与える事で世界の均衡を保ってきた。貴様の言う通り、私はそれに誇りを持っている』
フッと、神が笑った。
途端に、俺に刺さっていた視線も鋭さを無くす。
『貴様等二人に、私は期待しているのだ。貴様等ならば、この崩れた均衡を修復出来るのではないかとな』
飴と鞭。
『チッ、貴様は目敏いな』
やっぱりかよ。
「え、え? 急に何の話ですか?」
俺が神と思考だけで会話したので、上谷さんには訳が分からないだろう。
説明するのも面倒だけどな。
「いや、何でも無い。俺も、納得はしないけど分かったからもう良い」
さっさと話を進めたい。
そんな気分だ。
『では、貴様等は言った通りの地で転生させる。最早異論は無いな?』
「はい、ありません」
「はいはい、無いですよ」
何とも投げ遣りで、不遜な態度。
これで与えられる力が弱くなってくれれば御の字だが、そんな考えも読まれていては意味が無いか。
『では、行くが良い』
俺と上谷さんの額に、神の手が片方ずつ翳(かざ)される。
『───頼んだぞ』
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