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【黒のハンカチ】
青空の下、頬が熱くなって泣きたい訳でもないのに衝撃で目の前がチカチカと光り
のどかな公園が、地獄絵図になったような気分だった。
彼は何も言わず、目の前のメルセデスに乗り込み、俚乃の為に買ったと
自慢げに車に乗せていたクマのぬいぐるみをこちらに向かってほおり投げた。
一応、ヴァランタレンのブランド品で、クマのぬいぐるみの首から、0.5カラットと言う
訳の分からないダイヤが埋まっているのだが…。
(拾って帰るしかない…か)
いつまでもその場所で尻餅を付いたままは流石に恥ずかしい。
こげ茶色のセミロングの髪をスッと整え、カラス口のバレッタで髪を丸めて止めると
俚乃は会社支給のスカートをパンパンと払い、
スタスタと歩き出してぬいぐるみを取ろうと手を伸ばした…時だった。
ヒヤリと、頬の熱を攫われ、慌てて見るとニッコリと
綺麗な髪の長い長身の少女が微笑んで濡れたハンカチを頬に宛がってくれたのだ。
金髪のロングヘアーに紫がかった目、恐らくはカラーコンタクトだろう。
フリルのスカートに縞のニーソ。
全体的にフリフリという言葉が合うほどのレースけれど、見える手足は凄まじく長くて
さっきの殴られた衝撃より彼女に逢った事のほうが衝撃に値するかもしれないと思えた。
「あ…ありがと」
「最低だね~女の子に手を上げるなんて」
「うん…でも、コレですっきりしたから!」
「痛くない?」
「うん、ありがとうございます。私仕事だから…良ければそれ、貰ってくれないかな?
クマのぬいぐるみだけど逸品物だから、質屋にでも入れちゃって?それじゃ!」
俚乃も、見上げてしまうほどの長身の彼女にクマのぬいぐるみを預けて
すっきりした表情だけをのこして、俚乃はその場を立ち去った。
そんな俚乃を遠目で見送って少女はクスッと微笑み、手元のクマをポンと叩いて踵を返した。
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