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カタン…部屋の鍵を、靴箱の上に置き、俚乃はパチンと部屋の灯りをつけ
短い廊下をため息ながら進むと、ドアを開きベットへバックを投げ捨てた。
「サイアクー」
ベットの横の等身大鏡に写った姿は、目の横が少し青くなった自分。
「あいっ!ぐーで殴った!女相手にぐーで殴る!?頭おかしいよっ!あーせいせいした。別れて正解!」
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「どうせ、お前も金目当てだろう!?ヤラせてもくれねーくせに、
物だけ買わせようなんて図々しいって解んねーのかよ!」
なんて…大通りのど真ん中で大声で言われた言葉に、俯いて何も答えないでいるしか出来なかった。
彼の言葉通りと認めたわけではない、ただ…別れを小声で切り出したのは私なのだから
彼に花を持たせてあげてもいいだろうと思ったのだ。
鍵谷俚乃(かぎたに りの)が、私の名前22歳の私と25歳の彼との付き合いは、
1年だが実際彼との時間はほとんど無かった。
付き合った翌日に、彼女と名乗る女が彼を返してと泣きついて来るという事件まで起しながら
彼は又日を変えては女を変えて連れ歩いていた。
そんな男に肌を晒すなんて出来なかった。
だから拒み続け、そして…彼の本性を知ったのは1ヶ月前。
他の女とホテルから出てくるのを会社帰りの道で見かけるという最悪の事態。
彼女だと言い続けていた彼は、何度も抱きたいと会社の前で待ち伏せして
そのホテルの前で何かと小細工をしては、連れ込もうとしていた。
しかも、会社が終わるこの時間に…
他の女と出てくるなんて、常識知らずもいい所だ。
俚乃は昼休みに仕事をしていない彼を呼び出し、別れを告げたのだ。
パーン
響き渡る音に周りの会社から出てきて昼休みを取っている人達が
辺りをきょろきょろと見回していた。
平手で一回、そして…あの強烈な台詞を吐き出し、再び今度は握り拳で顔を殴られたのだ
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