第一章一節

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夜、何時ものように玄関の下駄箱の上に鍵を置き、俚乃は部屋へと戻ると 室内の様子がおかしい。 「あの、男っ!」 元彼が、部屋を荒らしたのは…あのクマのぬいぐるみがあるかを探しに…来た為? 俚乃のテーブルの上に置かれた、灰皿はピアスなど小物を入れる為に置いていた。 翌朝付けて行こうと思うものをそれに乗せて置いておけば、翌朝になって バタバタとどれを付けようなどと悩む手間が省けるのだが。 そこに、前に2・3度遊びに来た彼は、タバコを容赦なく押し込む。 それは何度注意しても変わらなかった…それが今再び同じ事をされてるとは…。 泥棒なんかが入れば、間違いなく金銭的なものを持って行くだろうが アクセサリーBOXは一切手付かず。 ベットの周りや、布団の中、洗濯機の中などを調べられたのだろう 一気に部屋が汚されて脱力する。 「鍵…明日交換してもらおう…」 いつの間にか彼が合鍵を作っていたのだと思うとゾッと身震いが襲ってきた。 あのクマのぬいぐるみは、彼が作らせた特注品。 ダイヤの埋め込みも彼がやらせて、総額は教えてもらえなかったがかなりの額 俚乃は、片付ける手を止めてCMの彼女を思い出した。 「あの子…大丈夫かなぁ?でも、タレントさんってガードマンとか付いてるんだよね? うーん…連絡を取りたくても、ファンの子と間違われそうだしなぁ…」 ペタンと床に座り込み、俚乃が携帯をジッと見つめた。 (もし、元彼が会っているなら…あの人も付き合うのかな?いやいや あの場面見てたし…手を上げる男は最低とか言ってたし…ないよね…? でもでも、金に物を言わせてってのも…んあぁぁあああ!考えるの面倒っ!) 俚乃は思い切ってPCを立ち上げ、化粧品会社の名前から、やっとモデルの名前を割り出した ”ミナミ”それだけの名前。 「ブログあるかなぁ~?」 カタカタとキーを打ち込み見つけたブログは、彼女の私生活を綴るというより 関係者各位が、今日はこんな事をしていました。的な報告ブログ。 そこには、クマのぬいぐるみの入手先を問う書き込みが数個あり、そして クマになりたいと言う書き込みをみて、ぷっと吹き出す。 あのクマの行く先は… 「質屋にいっちゃうのに」 ふふっと笑いながら、メール欄を見つけて 返事が来ない事を覚悟した上でメールを打ち込んだ。
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