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「王、今なんと?」
弟君は動揺を露に同じ顔をした王に聞き返した。
返された王は優しげに微笑みを浮かべて、同じ言葉を繰り返す。
「私を殺して欲しい」
その聖母か菩薩のような表情とは裏腹に、口から吐き出されたのは終焉への願い。
弟君は目を見開き、唇をわななかせた。
「何故?王はまだ治めて十数年。まして年若い。何よりも、そんな願いを口にするほどに苦痛があるというか?」
弟君はまくしたてるように早口に言った。
弟君のいう通り、王はまだ三十すらも数えていない。
王子として健やかに何不自由なく育った。
それは隣にいた弟君がよく知っていた。
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