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……翌週。
「乗りまーす」
と私が閉まりかけるエレベーターに叫ぶと、中に乗り込んでた人がちゃんとドアを開けてくれて。
「ありがとうございま……す?」
「こないだはどーも」
先週私が誤ってドアを閉めてしまった男性、わざわざ1階まで追い掛けてきた男性……。
降りよう、そう思った瞬間。
ドアが閉まる。彼が閉ボタンを押していて。
二人だけの密室空間。
「ねえ君」
「こ、こないだ謝ったじゃないですか」
「違う違う。そうじゃなくて」
「はい?」
「ランチでもどうかなって誘おうとしてんだ、火曜日限定のランチがあって。誘いたかったんだ」
それでわざわざ1階まで駆け下りてきたらってこと??
「どうかな? 今日もやってるけど」
にっこりと笑う彼。
私は、はい、と言って頷いた。
(おわり)
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