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通勤途中にあるコーヒーショップ。ガラス張りのカウンターで文庫本を読むスーツ姿の人。歩きながら何気なく眺めるのが習慣になって。
「今日はグリーンのタイ」
「今日はハードカバー」
「今日はアイスコーヒーだ……」
ちらりと盗み見ては独り言を呟く。寝坊して飛び出すように家を出る弟、寝不足で出勤する父親とは違って、余裕のある大人って感じが格好良くて。
「あ……今日は寝癖??」
私はつい、口元に手を当ててクスリと笑った。いつも冷静な雰囲気の人が無防備さをさらけ出してるのはちょっとカワイイ。
「あっ!」
瞬間、私は焦った。だって笑っていた私を彼が見たから。
「……」
彼は私をちらりと見て、不機嫌そうに視線を本に戻した。
「ゴメンナサイ……」
心の中で呟くように謝り、私は会社に向かった。
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