5話 新人研修

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 修復課の1階上の階。  地下24階は資料室と小会議室、そして支部長室がある階層だ。  支部長。  それは特殊災害対策港区支部、最強の証。  その名は紫雨椿(しぐれつばき)。  24にして1つの支部を纏め上げる才女。  そして俺が最も苦手な部類に入る人種だ。  俺の前には1つの扉。  それは支部長室に繋がる扉で、何故か威圧感を感じる扉だった。  ……ふぅ、扉を開けようとノブを掴む俺の手は嫌な汗で少し湿っていた。 「失礼しまーーす」 「――遅い」  閉口一番にそう言い放たれた。  支部長室は酷く寂しく、それでいて全くと言っていいほど生活感を感じない部屋だった。  修復課とは大違いだ。  いや、比べるのがそもそも変な話か。  壁を覆い尽くす大量のファイルが収められた本棚に、部屋の中央に置かれた応接用のソファーと机。  その奥にはひと目で高級と分かり、それでいて機能性に優れた木製のデスクが1つ。  そのデスクに備えられたイスに深く腰掛け、こちらを向いているのがこの港区支部の支部長、紫雨椿だった。  黒い軍服のような服を着た若い女性。  体の線はモデルのように細いが弱々しくは感じず、豹のようにしなやかさを持った筋肉で覆われている。  顔立ちは整い、スっと通った鼻筋にスッキリとした顎のライン、長いまつ毛に大きな目。
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