『 うら若き夜の蝶 』

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男は脆い。 じゃあ、 女は…? 同性の僻み、争い程醜いものはない。 ならば、味方につければいい。 女は素直に私を愛し、全て捧げる。 裏切らない。 可愛らしい声で鳴き、 いじらしい反応で私を誘う。 許されない関係こそ媚薬。 性生活も徐々に歪み、普通じゃないものを求め、私は常に刺激を欲していた。 とある昼下がり。 お座敷に変わった客が来た。 「よ。黒日売!」 茶色の長い髪の毛を粗雑に束ね、煙管を吸いながら飄々と現れる。 破戒僧。 名は「火前坊」 変わった土産話と、実に珍妙な手土産を持ち現れて、汚い言葉遣いで私をいつも指名した。 腹が立つことに意外に気が合い、彼が来る度腐りきった感情を忘れることが出来た。 爛れた生活に、終止符が打たれる。 火前坊は言った。 「先生、やってみない?」 →
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