『 うら若き夜の蝶 』

2/12
前へ
/98ページ
次へ
「…美しい」 誰もが振り返り、口々に私を見てそう言う。 まだ純粋な、幼きあの頃には考えられなかった言葉が、私の口から饒舌に滑り出る。 「うちは高いえ?」 口角を上げ、妖艶に。 なまめかしく、無邪気に。 簡単。 単純。 明解。 つまらない日常を、乾いた心から取り払う為の… ただのお遊び。 「…つまらんわ」 雲のように白く宙に広がった息は、直ぐに虚しく消える。 この生活に、 夢なんて。 幸せなんてない。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加