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遊女の名は、
「鈴蘭」といった。
彼女は、私が泣き疲れて倒れていた場所の近く。
小さな町の舞妓だった。
そして偶々そこを通りかかって、倒れていた私を見つけた。
「嬢ちゃん、どこの子なん?」
鈴蘭は、意識朦朧とする私の隣に座り込み、絶えず笑顔で私からの返事を待っていた。
「あんた、何?」
霞む血だらけの左目を乱暴に擦り付け、グシャグシャの髪の毛を撫でつけた。
怖い。
゙人間゙は、恐い。
「…近寄るなっっっ!!」
後方に高く飛び退き、彼女から大幅に距離をとる。
そして直ぐに臨戦態勢に入り、身を屈めて相手の出方を窺う。
「近寄るな…」
睨みを効かせて反応を見るも、彼女は全く動じることなく私に話しかけた。
「なぁ」
「家にこーへん?」
その瞬間、張っていた緊張の糸が一気にブッツリと切れた。
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