『 うら若き夜の蝶 』

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------------------ 「黒日売~」 鈴蘭に゙貰った名前゙を呼ばれて、反応出来るようになるまで時間は掛からなかった。 鈴蘭の仕事を手伝うようになってからは、四六時中こう呼ばれる。 舞妓の見習いとして鈴蘭に教育を受け、礼儀作法を身に付け、喋り口調も更正された。 「なんやの?」 呼ばれて振り返ると、 「お座敷に出てみぃへんか」 と、 初めて仕事らしい仕事を提案された。 鈴蘭の仕事はことのほか面白くて、私はどっぷり遊女の世界へと染まっていった。 「ええの?」 鈴蘭は親切に見ず知らずの私を拾い育て、仕事まで与えてくれた。 彼女は、私が今まで接してきた人間の中では有り得ない程優しかった。 だからこそ、 彼女の役に立ちたいと、心からそう思っていたのだ。 「うち、お座敷出てみたい!」 →
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