『 うら若き夜の蝶 』

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「すまんのぅ」 手の甲には焼けただれた痕。 足の裏は血まみれ。 鈴蘭から貰った衣装はボロボロ。 草履の鼻緒は切れて泥だらけ。 下のものがしゃしゃり出れば上が黙っていない。 出る杭は打たれる。 毎日が昔を思い出す材料となる。 次第に純粋に仕事に楽しさを見いだしていた拾われた頃とは異なり、思考は黒く淀んで濁っていった。 左目が疼く。 ゙銀゙が、゙炎゙が出てくる。 駄目。 思考は腐り、またあの時みたいになる。 大事な人がまた、 死ぬ。 奇異な色の淡い炎が、 また町を包み込んだ。 →
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