『 うら若き夜の蝶 』

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誰が私を止められようか。 腐った思考とは裏腹に、 私の遊女「黒日売」としての仮の名は馳せていく。 燃えた町と、思い出の地を追われるように後にして。 未練を断ち切るために身を隠す。 それでも、馳せた名ばかりは消えることなく付きまとい、気づけば私はお座敷にいた。 汚れた行為に身を委ね、卑猥に何度となく身体を重ねる。 己が欲望の赴くままに。 何度も。 何度も。 「愛さなければ…」 「辛くないんやね」 簡単に騙され、 簡単に身を差し出す。 簡単に愛し、 簡単に自滅する。 「男は脆いな」 「…つまらん」 →
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