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ただそれは男として同性の会長を待たせている事より異性の副会長を待たせている事の方が気になるから、という意味で言っているのとは思えなかった。そうであるなら少しばかりは、などという余計な言葉を付ける必要はない。
単純に、自分達の長である彼を困らせる事に対しての忌避感がないようだ。生徒会室でのあの発言といい、彼は穂照の事を嫌っているのであろうか?
あるいは単にそれは彼の性格がそうさせているだけであって彼が特別嫌いというわけではない可能性もある。
どんな相手であろうとも一定の態度を貫き通すこの男は他人に対して好意も嫌悪も無いのかもしれない、と先を行き始めた彼の背中を目で追った麻耶はふとそう思う。
彼ならば例え相手が一国を預かる最高権力者たち――大統領やら首相やらが相手でもその冷淡っぷりな態度は変わらないようが気さえしてくる。
それはそれでかなり凄い人物のように思えるが……。
「それもそうやね。言っている事はひっでぇけどよ」
ともかく彼の早く中へ入ろうという意見には全員が賛同し生徒会メンバーは続々と惟太の後を追って先へと進み始めた。周りが動き始めたのを見て慌てて麻耶も彼らの背中を足早に追う。
彼らの背中を追う最中、彼女は彼らに連れてやって来たこの場所――周りにある縦に高い高層ビルとは異なり使用面積に制限がある海上都市にも関わらず面積を多く取り横に広がるように建てられた建物。
見た感じの雰囲気だと……その建物はアカデミーに通じるものがあった。何かを学び調べる場所、そんな感じがするのだ。
もっとも彼女はすでにこの場所の名を既に目にしている。今まさに建物の敷地内へと入るために向かっている複数の警備員や高度のセキュリティが備えられたゲートの前に置かれた看板で。
それには大きくこう書かれていた。
――『瓊々杵グループ:技術開発第二課 穂照技術開発研究所』
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