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「せ、先生‥‥」
教室の机の最前列、眉間に皺を寄せてノブが手をあげた。
「ど、どうしたの山下君?」
教師一年生の現国すみれちゃんは、正直に心配顔をしている。
僕ぁ、そんな すみれちゃんの顔を見る前に、そのスラリとした綺麗な足を見てるんだけどね。
「お、お腹が‥‥」
ノブは見事に体をくの字に曲げて、エキストラ以上の演技をしている。
「三太、あれやり過ぎじゃない?」
隣の席の桃は、僕の方へ顔を向け、鼻と上唇の間に鉛筆を挟んだが、小鼻の脇に皺が寄って、ああ~君の演出は取り敢えずカットね。
「へん、こんなのは、オーバーな方が良いのさ、見てな」
僕ぁ、椅子の背もたれに体重をかけて、頭の後ろで手を組んだ。
ついでに教室を見渡す。
落書き派1割、居眠り派1割、携帯派‥‥
「困ったわ、山下君でお腹が痛い人は3人目‥‥よし!保健所さんに連絡します。」
(おいおい)
すみれちゃんの発言は、僕のシナリオから外れ過ぎだ。しょうがない。
「ハイ、すみれセンセ! ノブ達は、休憩時間に、お菓子とか食い過ぎなのさ」
「三太くん! 人が辛い時に、そんな風に冷やかすものじゃないわ」
すみれちゃんは怒った顔も可愛いが、やっぱり足だね。うん、間違いない。
――教室の後ろのドアが開いて、静音がトイレから教室に戻って来た。
ノブが腹を押さえながら静音とすれ違う。
「ボス戦うだった?」
「もうひと踏ん張りかしら?」
先生に見えない様に、静音がノブに渡したのは、白い携帯電話。
「フッ、上出来!」
僕ぁ、にやけながら机の下で、応援画面のOKのボタンをクリックした。
桃も同じ様に、机の下で携帯電話のボタンを押している。
「これでいいのね?」
僕の机の脇を通過しながら静音が言った。
「ああ、お疲れ様。このまま突っ走る!」
ゲームの中の僕は、盟主〔ブラックホール〕という名だ。
総合ランキング現在世界70位。
このゲーム、五分の油断が命取りになる。
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