第1話*喫茶ステラの日常

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「いやー、よかったね。だだの貧血で。最後は顔色よくなってたみたいだし。」 保健室から下駄箱に向かう廊下には愛姫、柳、そして愛姫の幼馴染みの池谷美冬(いけたにみふゆ)が歩いていた。 「まあねー、なんか逆に赤すぎかなって思うくらいだったけど。何でかな、ねー美冬っち。」 二人の会話を聞きながら美冬は持っていた紙パックのコーヒー牛乳をズコーッと音を立てて飲み干した。 「私は逆にあの子が道を踏み外さないか心配だわ。」 「へ?どういうこと?」 「またまたー、美冬っちは大袈裟なんだから!」 これらの会話で解る通り、一番の常識人は美冬である。貧血だった女の子が柳に見惚れていたのは歴然で、そこから百合的なことにならないかを心配していた。というのも、この二人は学校でも指折りのモテキャラなので、冗談ではなく本当にそういうことが何度かあったからだ。 柳は何となく理解はしているものの、警戒心もなく、もはや他人事のようにケラケラ笑うだけだ。しかし言いたいことはスッパリザックリ言うタイプなので、あまり大事になる前に片が付く。座右の銘は成るように成る、である。 そして一番のモテキャラであるはずの王子が、一番残念な性格だった。天然で、お人好しで、自分から厄介事を背負ってしまう、つまりは面倒くさいタイプだった。今もただ一人、女の子の気持ちをよく分かっていない。顔だけはいいのだが…。
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