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愛姫がモテる理由は顔だけではなかった。女の子なら誰にでも見せるそのキラキラと輝くような笑顔、これが一番の要因だった。しかし、これは愛姫も意図してやっていることではない。美冬の言ったように癖になってしまっているのだ。
「才パパ恐るべし。」
美冬はぽつりと呟く。
芸名は才(さい)、本名は木村才人(きむらさいと)。今をときめかせる人気俳優であり、愛姫の実の父親だ。
彼は昔から"女の子には優しく、紳士に、カッコ良く"という自分のモットーを日々かっこよく育つ娘に毎日のように言い聞かせていた。そのため愛姫も疑うことなくキラキラスマイルを磨いていったのだが、いざそれが普通ではないことが分かったとき、なかなか切り換えが出来なかった。
そして現在でもその癖は抜けず、女の子に対する眩しい笑顔で学校、すれ違うだけの女性まで見事に虜にしていた。本人の意思には関係無く。
「うぅ゙…どうしても体が勝手に…。」
「しっかりしなさいよ!それじゃあいつまで経っても『王子』脱却は望めないわよ?」
「わ、分かってるよ…。」
そう、愛姫は『王子』というあだ名に良く思ってはいなかった。寧ろ、男に見られることも嫌だったのだ。
本人の知らないところで、知らないうちに確立してしまった自分の立ち位置。男子じゃないけどそんなこと関係ないわ、だってイケメンなんだもん♪的な女の子たちのイメージを裏切ることになるが、やはりどうしても中身はちょっと頼りない普通の女の子なのだ。
鈍くてとろくてヘタレだが。
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