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初夏の爽やかな風が頬を撫でる。空は蒼く澄み渡り、雲は優雅に漂い、朝露のついた草花はキラキラと輝いている。
共学校、宝城星高等学校では、隣町の高校と女子バレーボールの練習試合が行われていた。体育館内は盛り上がりを見せ、今まさにセットポイントが決まり、ホイッスルが鳴り響く。
「25―19、宝城星!」
ワアッと歓喜に溢れる宝城星のバレー部、隣町のチームは悔しそうに表情が暗い。各々の反省会が終わり、片付けが始まった
「皆!!帰ったらまた反省会やって試合するからね!!」
隣町のキャプテンは声を張り上げチームメイトに指示を出す。すると、ガヤガヤと入口近くで人だかりができていることに気付いた。目を凝らして見てみると、そこにいたのは…。
「―――――王子…!!」
それまできびきびしていたキャプテンは急に顔を赤らめた。
人だかりの奥に、その原因はいた。彼女が言った王子…スラッと伸びた背に長い手足、スッとした鼻筋にキリッとした目で、整った顔立ちのまさに王子様のような容姿をした人間が周囲の目線を集めていた。
「ごめんね、ちょっと通してもらってもいいかな?」
王子は丁寧に断りながらキャプテンの方に歩みを進める。キラキラと光るその存在感に、バレー部員全員が釘付けだ。
「あ…え?こ、こっちに来る!?ウソ!?」
近付いて来る王子の姿にキャプテンの心臓はドクドクと音を立てている。もうすぐそこに王子がいる、そればかりかにっこりと微笑んでいるように見える。
「わっ、私に――――!?」
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