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「た、大変だ!とにかく保健室に――――!?」
王子が言いかけたとき、宝城星のキャプテンがすっとしゃがんで手を伸ばす。
「立てる?」
「あ…だ、いじょ…ぶです。」
明らかに大丈夫ではなさそうな弱々しい声。すると宝城星のキャプテンは手際よく座っていた女子を持ち上げて、お姫様抱っこをした。
「―――っふわ!?」
驚いたのは具合の悪い彼女だけではない。相手チームのキャプテンも、王子までも呆気にとられて固まっている。様子を伺っていた周りのギャラリーもざわざわと声を上げた。
「は…!お、下ろしてくださ…重いですから…!」
わたわたと青い顔で訴えるが、宝城星のキャプテンは有無を言わさない。
「何言ってるの。こんなに細いんだから重いわけないじゃん。軽いよ、だから暴れないで。ちゃんと運んであげるからさ。」
ニカッと八重歯を見せて無邪気に笑うキャプテンに、青い顔が赤みをおびた。
「ふああ…っは、い。」
具合の悪いのもふっ飛んでしまったようなキラキラした目で返事をすると、キャプテンは軽々と体育館の真ん中を彼女を抱いたまま進んでいく。
「皆、あとよろしく。木田さん、この子保健室に運んでくるから先生か親に連絡したげて。」
木田さんは相手チームのキャプテンの名前だ。
「わ、わかったわ。よろしくね。」
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