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お前には大切な奴はいるか?
そう言われれば俺、九条蒼哉(くじょうそうや)は迷わず最愛の妹である九条みなもの名前を口にだろう。こういってはなんだが、妹のみなもは器量もよく、気立てもいい。運動神経も抜群なのに性格は誰にでも優しい。そして俺にだけは、少し甘えん坊なところもあるいわゆる俺にとっての理想の妹なのだ。
だからこそ俺は昔からみなもを可愛がってきたし、悪い奴らからは守ってきたつもりだった。そう、つもりだったのだ。
ある日突然、俺が大事に大事にしていたみなもは事故により死亡したと連絡が入ったのだ。
ダンプカー同士の正面衝突に巻き込まれたという午後6時に流れそうな『不幸なニュース』は俺にとっての現実となりあの可愛かった顔や『イイ身体してんねぇ』といって金丸(かねまる)にいつもからかわれていた豊満なボディも見る影もなかった。
……文字通り見る影もなかったのだ。
グシャグシャに潰れた顔、潰れた胸、不自然な角度に曲がった腕。
どれをとっても俺が知っているみなもと一致するところなどなく、俺はその『物体』をみなもと確認してあげることができなかった。
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