拝啓

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彼方、めをさましたのは、いつかの貴方の夢の途中。 遮光カーテンをぴったりとひいた部屋には、朝がきても光は踊らない。 ゆっくりと上体を起こすと、すこし汗ばんだせなかには、べったりとシャツが貼り付いていた。 右手のこぶしで額の汗を拭う。 朝だった。 とおくのほうで声がして、子どもが通路側をはしゃいで駆け抜けていくのがわかった。 タイマーですでに切れていたクーラーをもう一度入れなおし、僕は再びベッドに寝転がった。 僕の家は六階だてマンションの、まさにその一階だった。 寝室は駐車場につながる外の通路側に面しており、鉄格子のついた窓をぴったりとしめていても、よく外の声が響いてきた。 .
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