大好きなお姉さん

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「でも、お兄ちゃんたちが帰ってきたら、涼華のランドセル蹴飛ばしちゃうわよ。 踏むかもしれない。 涼華はそれでもいいのね?」 私は仕方なく、両親と一緒に寝起きしている部屋にランドセルを置きに行った。 「行ってきます!」 今度こそドアを開けて外に飛び出す。 「えっちゃんに迷惑かけちゃだめよ」というお母さんの言葉を背中に聞きながら。 五階までまた階段を一段飛ばし。 息を切らしてえっちゃんの家に着くと、私はいつも通りドアに向かって「えっちゃんあそぼ!」と大声で叫んだ。 えっちゃんの家の表札は銀色でつやつやした板だ。 亮兄ちゃんが図工で作った、接着剤がはみ出しているうちの表札とは大違い。 『片山』と彫られた文字をなぞっていると、えっちゃんが笑顔でドアを開けてくれた。 「涼ちゃん、ママが新しい人形とおうち買って来てくれたの。今日はそれで遊ぼうよ」 「新しい人形?えー、いいなぁ。かわいい?」 「かわいいよぉ。ほら。早く早く!」 えっちゃんが、靴を脱ぐ私の手をせっかちに引っ張る。 えっちゃんのスニーカーしかない玄関で、私は脱いだ靴を上品に揃えた。 えっちゃんがいつもそうしてるからだ。 五年生のえっちゃんの家に来ると、私はちょっと大人になった気分になる。
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