第一夜

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第一話 『虫の知らせ』 共通の友人T君が、バイクで事故を起こし意識不明の重体となって入院した時の事、とるものもとりあえず病院に駆けつけた、僕とSとUとNの四人は、T君の母親から、予断を許さぬ危篤状態であることを告げられ、面会謝絶であるので、本人に会うこともままならず帰宅の徒につこうとしたが、そのまま寝る気にもなれず、みんなで駅前の居酒屋へゆき、しんみりと酒を飲んでいたら、突然、S君がハラハラと涙を流し始めた。それを見たUとNも大粒の涙をこぼし、僕も原因不明の悲しさに襲われ、涙が滝のように溢れ出した。みんなで顔を見合わせて「Tのやつ、死んだな……」と、誰からともなく呟いて、頷きあいながら時計を見ると、午前2時15分であった。しかし、実際にはT君は死亡しておらず、他に心当たりのある人間も誰ひとり死んでいなかった。
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