第一夜

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第二話 『通夜』 K君の母親が亡くなって、実家でとりおこなわれた通夜に、友人のW君と出席した時の事、K君の実家は山の中の元豪農で、横溝正史の小説に出てくるような庄屋造りの古い屋敷に、部落の人たちが30人ほど集まっていた。香典を置き、焼香をすませて帰ろうとしたところ、焼香の作法の分からないW君が、線香を1本取って半分に折ると、2本になった線香に火を点けて線香立てに挿し、香炉からつまんだ抹香を、額ではなく鼻の頭に3回ほど押し戴き、朝青龍が懸賞金を貰う時のように、いかにも適当といった感じで、片手で三回ほど手刀を切ったところ、驚いたことに後に続く部落の人たち全員が、W君の真似をして手刀を切っていた。
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