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第三話 『I君の事』
18歳の頃、よく友達5人くらいとK君の家でたむろしていた。いつの頃か、I君という中学時代の友人がその仲間入りをしたのだが、小学生の時に特殊学級に通っていた人で、無口というか、なにも喋らず、僕らが持ち寄ったスナック菓子を黙々と食べて立ち去るだけだったので、いつの間にか煙たがれるようになった。ある晩、K君の家で「Iの野郎が来ても、これからはシカトしてやろうぜ」などと、I君の悪口を言い合っていたところ、突然K君が窓を指差して叫んだ。なんと当のI君が、いつの間にか窓から顔を出して話を聞いていたのだ。それからしばらくの間、I君は顔を出さなくなった。風の便りに、援交をしているという噂のある女友達に「おめ~、サセバカだって?」と、面と向かって聞いたという話が伝わってくるくらいだった。ところが、ある土曜の晩K君が一人でいたところ、門のところにI君がたたずんでいるのが見えた。K君はすぐ部屋の灯りを消し、居留守を決め込んだが、いつの間にか寝入ってしまい、明け方起きたK君は薄明るくなった窓に目を向けて悲鳴を上げた。もちろんI君が覗き込んでいたからである。
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