第一夜

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第四話 『年上の女』 後輩のAの話。母子家庭のAが高校生の頃母親が入院し、近所の金物屋のお姉さん(30才独身)が家事手伝いにしばらく来てくれた事があった。いつの頃かAと肉体関係になり、時折こづかいをくれるようになったのだが、ある日二階の勉強部屋でAが机に向かっていると、突然お姉さんが「寂しいの、抱いて!」と叫びながら、後ろから抱き付いてきたので「甘ったれてんじゃねえよ、ババア」と冷たくあしらったところ、無言のまま階段を駆け下ってゆく音がして、なぜか嫌な予感がしたAは、台所に向かったお姉さんの後を気づかれぬように追い、隣の部屋の襖の隙間からこっそり覗くと、流し台の下から取り出した包丁を握り締めたお姉さんが、鬼のような形相でドタドタと二階へ駆け上がってゆく姿が見えたので、Aはそのまま裸足で家を逃げ出し、三日三晩、友人の家を泊まり歩いた。その後、ヤクザの情婦になったお姉さんが自分の命をつけ狙っているという情報が入り、Aは関東を脱出して九州方面へ逃亡したという。
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