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「オイッ!何回コールしたと思ってやがんだ唯!!何かぁ、今まで暖かいベッドでオネンネしてたってか?」
「ふん……相変わらず五月蝿い野郎だなキース。何回もしつこいんだよ、ストーカーかお前?」
出た途端に罵声をまくしたてるキースという人物に彼こと───「唯(ゆい)」は皮肉混じりの口調で軽くかわした。
キースは更に罵声を放つが唯はその雑音を遮るように言葉を返す。
「ところで何の用だ?」
すると、「はっ!?」と我にかえりキースはコホンと咳をうつと、電話をかけた要件を思い出した。
「あの口うるさいジェイルの旦那に頼まれてお前にかけたんだけどよ。お前が追ってる奴が殺されたらしいぜ」
「どういうことだ?」
「厄介なことに奴は、エビルにやられちまったらしい」
『エビル』───通称「魔族」と呼ばれる存在で、数百年前に一人の錬金術師が禁を破り研究と実験を繰り返し誕生した新しい種である。
魔族と呼ばれる種は人間との交わりにより種を増やしてきた。もちろん、交わりを持った人間はエビルに血肉を貪られ悲惨な運命を辿るのだが……
「馬鹿な、奴は能力者だぞ!?同じ能力者やエビルを数多く狩っている奴が……」
能力者───生まれながらに特殊な力を持った者達の名称で、エビルと対等に渡り合える唯一の存在である。
「そんなこと俺に言われてもな……。まあ、あの化け物達からすりゃ、奴も俺達もそこらの人間と変わりゃしねえってことさ」
確かにキースの言うことも彼は理解している。能力者といえどほんのわずかな油断で無惨な結末を迎えるのだから。
「そうだな。所詮は人間……か」
煙草の煙が薄く消えていく様子を見ながら、唯は少しの沈黙に入るが、電話の向こうで何やら慌ただしい動きがあっているのに唯はハッと我にかえる。
「ヤバイ事態だぜ。化け物どもを追っていたエージェント十名の内、三名がやられちまったらしい!」
「その場所は?」
「お前のいる場所からだと……」
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