レイン

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        ◇  豪雨の合間に鳴り響く雷鳴とともに、断末魔が建物内に響き渡る。十名ほどもいたはずの戦闘服の男女達は三名が無惨な肉塊へと変わり果てていた。 「フランクもやられた!どうするんだマシュー隊長?」 「陣形を崩すな!あの化け物どもは直ぐにでも俺達を喰らいにくるぞ!!」  マシューは周囲を警戒しながら指揮する。任務で追っていた化け物二匹と数十分前に交戦し、三名のエージェントが餌食となってしまった。  だが、彼等は仲間の死に嘆いている暇はない。次は自身かもしれない恐怖と緊張が見え隠れしている。もうじき仲間を喰らい終えた化け物が自分達のいる場所まで迫ってくるのは時間の問題であろう。  今は使われていない廃虚と化した研究施設の地下階段を足音を消しながら急いで駆け下りる。 「この奥で陣形をとり奴らを迎え撃つ。弾薬を惜しむなよ!」  マシューの言葉に静かに頷く。腰のホルスターから銃を抜き構えながら奥の錆びた扉の前で立ち止まる。特殊な指の合図で二名のエージェントが、そっと扉を開け銃口に装着されたレーザーポインターで薄暗い空間を貫く。  先に入ったエージェントの合図でマシュー達も中へと入った。薄暗い空間には研究資料が散乱し放題で、床や壁にはひびがありどれだけの期間、施設が破棄されたのかを物語っていた。  マシューの指揮のもと、弾薬を補充し扉へ銃口を向け、弧を描くように陣形をとる。入ってきたところを一斉に蜂の巣にするためだ。だが、そもそも通用するのか?不安をよそに、階段を下りてくる物音が……。この場にいる全員に緊張が走る。
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