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「小僧……そんな口を叩いていられるのも今の内だぞ。貴様は地獄の苦しみと苦痛で死にたくなる……。そうだな………八つ裂きにした後でたっぷりと料理してくれるわ」
「やってみろよ……出来損ないの化け物」
その言葉に反応し魔族はキッと鋭い視線を向けると、背中から生える無数の触手を青年めがけて放つ。
うねりながら向かってくる触手は先端からパクリと割れ鋭い牙をみせつけ青年を捕らえると、先ほどの女エージェントのように───いや、更に激しく貪り始めるが、スゥッと蜃気楼のように青年は消えていく。手応えはあったはずなのだがその感触が急になくなる。魔族は辺りを警戒しながら見渡す。
「そろそろ終いにしようぜ触手野郎……
」
魔族は声がした方を向いた瞬間、目の前の薄闇が微かに揺らめく。同時に一瞬にして距離を詰めた青年は右手で魔族の喉元を掴みあげ、ニヤリと唇を歪ませると、左手の拳が紅い煌めきを放ち始める。
魔族は抵抗するもビクともしない青年の細腕に、次第に恐怖心が芽生える。今にも握り潰されそうな感覚が「助けて」という発音を自身から永久的に奪い去るものだと───魔族は自身の終焉を悟った。
次の瞬間、魔族の胸板へと紅い拳を叩き込む。その衝撃と爆発で燃えながら壁へと吹き飛んだ魔族は、壁に激突し消し炭となる。
「どうだ。炎の味は癖になりそうだ
ろ?」
一瞬の出来事に唖然としていた五名のエージェント達。自分達が今のいままで手も足も出ない絶望的な状況をこうもあっさりと片付けてしまった青年に……。
マシューはエージェント達に銃をしまわせる。疲弊しきった足取りで青年へと近寄る。
「……すまないな。我々では全く歯が立たなかった。私が不甲斐ないばかりに五名の部下を失ってしまったが」
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