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ユウの頭は真っ白だった
“あいつはきっと本気だ。でもどうすれば・・・?もし私があいつの言うことをきいたとして、あの子を返してくれるとは限らない。”
唇を噛み締めるユウ
“それにたとえ返してもらったとしても私があいつらの言うことをきくなんて・・・。”
言い表しようのないもどかしさがさらにユウを追い詰めた
「どうしますかマツブサ様?あの娘、言うこと聞きますかね?」
同じ服を着た集団のうちの一人が尋ねた
マツブサと呼ばれた男は眉ひとつ動かさずに鼻で笑う
「なに、問題ない。あいつは絶対にポケモンを見捨てられない。それがあいつの力であり、弱点だ。」
ユウは必死に考えていた
あいつらの目的は?
自分を欲してまで力を手に入れたいと思う理由は?
この状況を切り抜ける方法は?
だがどの考えも行き着く先は行き止まりばかりだった
今ユウたちがいる塔の最上階には天井も壁もなく、風化して今にも崩れそうな柱が残っているだけで、広々とした空と遠くに水平線が見えていた
その柱に切れる光は茜色に染まり、ユウの影を沈みゆく太陽と反対側に映していた
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