129人が本棚に入れています
本棚に追加
何人かの人が慌てて少女が飛び降りた海を覗き込んだ
その高い高い塔の最上階からでは高々と上がる水しぶきしか見ることはできず、水音は聞き取られなかった
「な、何てことを・・・!あんなに細い体でこんな高いところから飛び降りたなんて、普通の人間でもただではすまないだろうに・・・。」
覗き込んだ人間の一人がマツブサのもとに戻りながら呟いた
この階にいるほぼすべての人間が少女の生存を絶望した
ただ一人を除いて
「・・・あいつが死んだだと・・・?笑わせる!あいつがこんなことで死ぬわけがない。」
マツブサが辺りの空気をぶち破り、大声で言い放つ
始めは慌ててたじろいでいた人々も落ち着いてくると、たとえ尊敬するボスでも言っていることが信じられなかった
「ですがあいつは我々の指示通りポケモンを一匹も持ってきていません。それは我々も確認済みです。どうやって・・・・。」
一人の人間がうつむきながら呟くように尋ねる
「あいつに従うポケモンはボールのなかだけには収まらない。我らの手が届かない場所までくればすぐに助けにくるだろう。」
うつむいていた人間がちらっと顔を上げてマツブサの顔を見た
そして顔を見てぎょっとした
笑っていたのである
「あいつは助けにくると言った。ならば必ず助けにくるだろう。我らにはあの力が、あの娘がいるのだ。いいか、今すぐあいつを捜せ。そして必ずやあいつを我が手に・・・!」
マツブサの目はきつい光をたたえ、口元は静かに笑っていた
その有無を言わさぬ気迫におされ、部下たちは改めてこの男への畏怖に似た畏敬の念をあらたにしたのだった
最初のコメントを投稿しよう!