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サイコは目を丸くした。
「珍しい・・・私の心配してる・・・」
俺はハッとして手を離した。
言われてから気づいた。
こんな風に誰かの心配をしたことなんて今まで一度もなかった。
サイコは微笑んでいた。
「なんだよ、笑うなよ」
何だかとてもバツが悪くなって、サイコから目をそらした。
「ありがとう」
サイコは俺の顔を覗き込んで笑った。
今までみた中で一番穏やかで優しい微笑みだった。
俺の胸は今までにないほど高鳴った。
「・・・と、とにかく、具合あんまりよくないみたいだから、む、無理はすんなよ」
「はい」
「あ、あれだからな、心配とかじゃないからな。あんたが来ないと世話してくれる奴がいなくて困るってだけだからな!勘違いすんな・・・っ!!」
唇に感じた一瞬のぬくもり。
なにが起きたのか訳が分からない。
頭が真っ白になって、思考も体の動きも完全に停止した。
「・・・おかしな人・・・。また、来ますね」
ほのかに頬を赤らめ、照れたようにわらっただけで、サイコはいつものように部屋を後にした。
俺はただそれを見つめることしか出来なかった。
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