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いつもと同じように時間が流れた。
でも、変わったことが一つ。
サイコは身の回りの世話以外にも俺のもとにくるようになった。
別に何をするわけではない。
他愛もない話をするだけ。
内容もあまり思い出せないくらいの話。
でも、俺にとっては何にも代え難い大切で、愛おしい時間・・・。
日に日に衰えていく身体をかかえながらも、心はどんどんいい方へ向かっているようだ。
さらに季節は巡った。
晴れた日には空は高く、高くなり。
雨の日には冷たさが増した。
窓の端にかすかに見える木の葉は、赤く色づいていた。
思うように動かなくなった身体だが、俺は一つあることを始めた。
ベッドのうえでスケッチブックに向かって鉛筆を走らせる。
春にやってくるサイコの誕生日までに何が何でも仕上げたい。
窓の外に広がる空に昇る白煙を横目に見ながら俺は作業の手を止めなかった。
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