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サイコのまとまらないめちゃくちゃな話を俺は黙って聞いていた。
しかし、その隙間から断片的にみえた彼女の人生は壮絶だった。
言葉が出なかった。
でも、想いはあふれていた。
サイコの頬に触れる。
次々に伝う涙を俺は指でぬぐった。
涙は俺がいくらだって拭ってやる。
だから安心していいよ。
でも、できれば泣くな。
俺はお前の泣き顔より笑顔がみたいんだ…。
「いい加減笑えよ…怒るぞ…」
そう言ってサイコに頬笑みかけた。
サイコは一瞬笑ったが、すぐに顔をぐしゃぐしゃにして泣きだした。
あーあ、しかたねぇなあ…
俺はもう一度サイコの身体を抱き寄せて髪をなでた。
外は徐々に白み始めていた。
今日も一筋の白煙が空にのぼっていく。
きっとあれはサイコの母なのだろう。
どうか安らかに…
俺は生まれて初めて神に祈った。
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