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窓の外の景色は寒々としている。
空はどこまでも曇っていて、海も重々しい鈍色だ。
寒さが厳しくなってきたので、もう何日もテラスへ続くドアは開けていない。
ベッドに横たわって天井を見つめる。
最近目に入るのはこの景色ばかり…
「入りますよぉ」
サイコはいつもの笑顔で食事のお盆を持って部屋に入ってきた。
机の上にお盆を置いてベッドを起こす。
「ご飯に時間ですよ」
食事はだんだんお粥状になってきている。
しかしサイコはすぐにスプーンを口元に持ってきてはくれない。
訝しげに顔を見ると、彼女は満面の笑みでリボンのついた袋を差し出した。
そして…
「はっぴばーすでーとぅーゆー…」
突然調子はずれな歌を歌いだした。
「お誕生日、おめでとう」
そうだった。
今日は俺の誕生日だった。
サイコは包みを開けて中からニット帽をさしだした。
「これから寒くなるからね」
サイコは手際よく帽子をかぶせた。
「うん、やっぱり似合う!」
すごくすごくうれしかった。
サイコが自分のために選んでくれたプレゼント。
調子外れのバースデーソング。
満面の笑み…。
ただ俺はこの気持ちをどうやって表現したらいいのかわからずに複雑な顔をすることしかできなかったけど。
それでもサイコは満足そうで、
「さ、ごはんごはん!!」
なんていっていつものようにスプーンを口元へ運んだ。
俺もいつものように口に入れて飲み込む。
が、うまく飲み込めずにむせてしまった。
「ごめんなさい!!大丈夫ですか!?」
…サイコのせいじゃない。
懸命に背中をさするサイコの耳によわよわしい声が届いた。
「…死ぬのが…怖い…」
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