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『見て、あの子かわいー。目ぇ青いよ?ハーフなのかな?』
『てめぇ、女子に騒がれてっからって調子に乗んなよ。親も家もねえ癖に!きもいんだよ、その眼!』
『大丈夫よ、先生はあなたの味方だから…だから安心してすべて委ねなさい…』
『すごーい、奇麗な顔ー。あんたさ、あたしのペットにならない?』
『気に入ったよ。ワシがこの少年を落札しよう。一千万でどうだ?この美しい目、整った顔立ち、いくら金を出しても構わんよ』
フラッシュバック。
今まで俺の上を通り過ぎて行った人間たちの声と顔が次々に浮かんでは消える。
羨望
憎しみ
強要
支配
権力
浮かんでは消え。
浮かんでは消え。
「よせっ!!」
俺は耐え切れず、サイコの手を振りほどいた。
口の中はからからに乾き、玉のような汗がふき出ている。
「はあ、はあ、はあ、はあ…」
呼吸は大きく乱れていた。
「痛っ!!」
サイコの手の甲は俺にたたかれて赤くなっていた。
赤くなった手を見て、俺ははっとした。
突然の反応に何より自分が驚いている。
ずっとたまっていた膿が、身体の中で一気に暴れまわったかのような感覚。
「ごめんなさい。私、すぐなれなれしく触っちゃって…」
サイコは沈んだ表情になり、赤くなった手をさすった。
「海の色と一緒だなぁって思って…その眼の色がそのまま絵具の色に出ているような気がしたから…」
申し訳なさそうに、悲しそうに微笑んで彼女は俺の部屋を後にした。
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