─序章─

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<ザアアァァ> 今日は雨だ。アスファルトで凝り固められた道路に長い水滴が幾重にも重なって地面に落ち、騒々しい雨音を立てている。 そして小さな水柱を掻き立てながら走り去って行く自動車をガードレール越しに横目で見送りながら、俺は歩行者道を歩いている。 目的地に着いた。 <ザアアァァ> 相変わらず鬱陶しい重厚な雨音がコンクリート製の寒色系の雨避けを叩いている。今日は気温も湿度も共に高く、俺は少し滅入った気分になっていた。 普段ならドカドカと"施設"に入る俺だが、この時ばかりは藍色の足拭きマットに靴底を神経質と思われる程に丁寧に拭い、綺麗にして透明の自動ドアを潜った。
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