キリ番:100:聖架さんへ

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「えっと・・・・・・?」 普段背の高いミカノを見慣れているせいか、少女はずいぶん小柄に見えた。 彼女はじろりとタヤクを一瞥し、ついでミカノのことも見つめる。 それでもミカノは動かない。相変わらず「ひまだー、ひまだー」と言うばかりである。 そんなミカノの言葉に眉を顰め、 「あなたたち、傭兵か何かなの?」 そう少女が切り出した。 話をするだけならどうということもない。 そう思って、タヤクはとりあえずこの二人の相手をすることにした。 もしかしたらミカノの退屈も紛らわすことができるかもしれない。 「いや、そういうわけじゃないけど。なにか困りごとかい?」 「まぁね。腕の立つ人なら、ちょっと乱暴ごとに付き合ってほしいんだけど」 少女が言ったとたん、ミカノが跳ね起きた。 がたんっ、と椅子を鳴らし立ち上がる。その眼はきらきらと輝いてさえ見えた。 「なに?! 野盗潰し?! 魔物の殲滅?! やるやるっ」 急に話に割り込んできたミカノに少女も青年も唖然とするしかなかった。 慣れたタヤクははぁ、とため息を一つだけ吐き、黙ってミカノの後頭部を叩いて黙らせる。 その様子にもまた二人の目が見開かれた。 柔らかな茶色の髪に柔和な微笑みで物腰穏やかなタヤクは、よく友好的な好青年だと思われる節がある。 実際旅をする六人の中では一番の常識人であるし、女子供に対する態度も優しい。 しかし、ことミカノの扱いに関してだけは別であった。 「いったいな馬鹿タヤクっ! 人の頭をいきなり叩くなっ」 「お前こそ少しは落ち着いて人の話を聞けっての。すまないな」 前半はミカノに、後半は唖然としている二人に声をかけ、メニューを手に取る。 「あんたたち、昼食はもうとったのかい? まだだったら食べながら話をしよう」
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