キリ番:100:聖架さんへ

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「村で作る民芸品の材料の為にこの山まで男の人たちが来てたらしいの。」 歩きながらも会話は続く。 「その時に野盗たちに目をつけられた、ってわけか」 「そう。村が近くにあるのは知らなかったみたいで、逃げた人たちの後を追いかけてきたそうよ。それから女の人を浚いに来たり、金品や食料品をぶんどったりしていたみたい」 「野盗というか強盗というか・・・・・・」 呆れたように声を漏らすタヤクだったが、ナギサにとってはどちらも悪人であることに変わりないから問題ないらしい。 一人歩くのが面倒くさいといって浮遊の術で宙を舞っていたミカノも「ぶっ飛ばすには変わらないから名称なんてどうでもいいわ」などとうんうん頷いていた。 どうも男性陣より女性陣の方が考えが暴力的だった。 と、宙を行くミカノが何かに気が付く。 「煙だ」 「煙?」 「たき火でもやってんのかしら。ほっそい煙が・・・・・・ほら」 彼女が指さす方をまじまじと見る。 たしかに、木々の奥深くにうっすらと立ち上る煙のようなものが見える。 しかしいまはたき火をして暖を取るような時期ではない。山を下りて近くに川がある為、大方獲れた魚でも焼いているのではなかろうかとタヤクは見当をつけた。 ならば、と今まで以上に慎重に、音をたてないように進んでいけば、火を囲み魚を貪る男たちがそこにいた。 ところどころほつれて汚れたシャツや、獣の皮を剥いで誂えたような上着など、似たり寄ったりな格好をしている。 たき火を囲んでいるのは十数人。 ただ、そいつらのさらに奥には、山肌を削って作ったような洞穴がぽっかりと口を開けていた。 「あの中にまだ仲間がいるかもしれないな」 「女の人たちもね・・・・・・」 神妙な顔で口々に言葉を交わすダークとナギサ。 タヤクもその輪に加わろうとしたが、自分の真上に浮いていたはずのミカノの姿がないことに気が付いた。
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