キリ番:100:聖架さんへ

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「あいつっ!!」 あたりをきょろきょろと見回し、ミカノの姿を確認して舌を打つ。 タヤクの様子に首を傾げた二人だったが、彼の見ているものを見てぎょっと目を見開いた。 『煉獄の炎よ 主に応え 反逆の徒を打ち貫け』 野盗たちの真上、遥か空中に漂いながらミカノが朗々と術の詠唱を行う。彼女の“力ある言葉”に従うように、大気が震え、魔力が高まっていく。 集められた魔力は彼女の右の手に集い、指先がぽぅと赤く染まって見えた。 『火炎の砲撃―フレイム・ショットぉぉぉっ!!』 ミカノの声に応え、指先に集められた火の精霊の力は五つの玉となって野盗たちへと襲い掛かる。 握りこぶし大の大きさだったそれは野盗たちの頭上で無数の火花となり弾け散った。 「うぉっ?! なんだっ!!」 「熱っちぃぃぃっ!!」 頭から火花を浴びた野盗たちは、手にしていた魚やら酒やらを放り出して慌ててその場に立ちあがる。 服が燃えるというほどではないが、剥き出しの腕や足に降りかかったそれは存外に熱い。 そうして彼らがばたばたと火の粉を払っている間にも、あらたなミカノの術が彼らを襲った。 「――チャンスね」 あまりの光景に唖然とするダークの横でナギサがポツリと呟く。 「ミカノが野盗たちを引き付けている間に、あの洞の中を探れるわね」 仲間もあれで全部のようだし。 そう言うナギサの視線を追えば、山肌に開いた洞穴から、さらに十人ほどの男たちが現れていた。 外にいた仲間の声に驚いて飛び出してきたのだろう、宙から地上へ降り立ち彼らを翻弄している少女の姿に一瞬唖然とし、我に返って次々と襲い掛かっていく。 「結構小さい規模の野盗集団のようね。あれなら私とミカノだけで十分だわ」 「・・・・・・はい?」 「ダーちゃんとタヤクは私たちがあいつらを片づけている間に洞穴へ入って、女の人たちや奪われたものを探して頂戴」 言うが早いか、ナギサは腰に穿いた剣をするりと抜き出し、ミカノの手によって混乱している野盗たちの前に躍り出た。 制止するために伸ばしたタヤクの腕を「無駄だ」と言ってダークが掴む。 「あいつは言っても聞きはしない」 諦めとも何とも言い難い彼の表情は、タヤク自身が嫌というほど知っていた。
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