15339人が本棚に入れています
本棚に追加
高橋隆志は魔術に通ずる者ならもう知らない者はいない存在だ。
たった一人でテュポーンを封じた英雄だが、後にロキに通じて二体の怪物となった妖魔
そこに至るまでにはエリオットの裏切りがあるが、その真実を知る者はほとんどいない。
「そのことだけど……まず、皆に最後の確認を取りたい。
君たちは、まだ戦う理由を持っているかい?」
絢斗のその言葉に、全員が反応を示す。
つまり、雌伏の時は終わりを迎えようとしているのだ。
「ある」
「あります」
二人の少女は間髪入れずに答えた。
一人は絢斗の妹の火美器薫だ。
そしてもう一人は由奈だった。
「……ではまず由奈さんは何故かな?」
「約束したんです。
だから、兄さんを元に戻したい」
「可能性が無くても?」
「それは先生が決めることじゃありません」
「由奈……」
はっきりと断言した妹の姿に、兄である泰は驚いた。
これほどまで自分の意思をハッキリと述べる彼女が珍しかったのであろう。
「隆志は僕たちにとって仲間で、かけがえのない存在だ。
戦う理由はそれだけでいい」
「……二人の気持ちは、よくわかった。
皆はどうだい?」
絢斗が他の四人――紗南、泰、そして木太真姫華、秋旗藍那に問う。
最初のコメントを投稿しよう!