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「……っああ、クソ」
駐輪場の壁を何度も拳で叩く。
畜生。畜生畜生畜生!
どうして俺じゃないんだ。
アイツなんだ。
幼なじみなんかじゃダメだ。
ただの幼なじみじゃ、詩絵に何も出来ない。何も。
こんなに胸が疼くのに、俺には見ているだけしかできない。
詩絵を奪いたい。
抱き締めたい。
アイツより先に詩絵を知ってるのに、先に隣にいたのは俺なのに。
今も隣にいるのが、俺だったらどんなに良かったか。
悔しい。悔しい……!
ひたすら壁を叩いていたら、灰色のはずの壁がうっすら赤くなった。
驚いて拳を見る。
ずっと壁を殴っていた右手がぱっくりと割れ、そこから血が出ていた。
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