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「うわ……馬鹿みてえ……なにしてんだ俺……」
落ち着け。
落ち着くんだ。
この大学には詩絵の他に、女なんてたくさんいる。
俺に釣り合う美人も腐るほどいる。
何も、詩絵じゃなくてもいいんだ。
俺に少しでも安息を与えてくれれば良い。
もしかしたら、詩絵を忘れさせてくれるかもしれないのだ。
「……詩絵じゃなくても」
小さく声に出してみる。
「詩絵じゃなくていい」
俺も人間だ。
詩絵しか愛せない訳はない。
そんなはずないんだ。
スクーターに鍵をかけて、駐輪場を出る。
俺の血が滲んだ灰色の壁が、ちらりと目の端に入る。
ああ、もうこの場所にスクーターは停めないようにしよう。
俺はキャンパスへと向かうためのドアを開けた。
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