002 やるせない思い

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「ああ! 樹ー!」 「……」 「樹ー!!」 向こうから自転車にまたがった男が俺の名前を叫びながらシャカシャカ走ってきた。 誰かなんて、見なくても分かる。 というかこんな奴が他に二人といてたまるか。 彼は、神山光希(カミヤマ ミツキ)。 真っ白でスタイリッシュな自転車にまたがったへにょへにょ不良ヤローだ。なぜかなつかれてしまった。 金を通り越してもはや白い短髪に、猫みたいにつり上がった大きい目。 耳元には軟骨のところに、二つの銀のピアス。 身長は俺よりちょっと低いくらいで、なんていうか徹平くんみたいな可愛い系。テンションは無駄に高い。 「わ……っしょーい!」 ザザザザザッ! 砂ぼこりをあげながら愛車(自転車)を俺の前に横付けする光希。 俺はわざと聞こえるように舌打ちをした。 こいつの頭は中二で止まっているに違いない。 正常な大学生は友達に砂ぼこりをブッかけたりしないはずだからだ。
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